商社マン人生で一番心に残った名言

商社の実態

どうも鈴木テツです。

 

総合商社にお勤めして丸13年が経ちました。

 

人生の約3分の1を商社マンとして過ごした事になりますので、従い、ぼくの体の3分の1は商社で出来ています。

 

具体的にはぼくの身長は180センチ弱なので、つま先からふとももの中央くらいまでは商社です。

 

多分こういうものは、体の全体的にまんべんなく3分の1を占めているものであって、具体的に体のどの部位が商社とかではないでしょうし、そもそも具体的に言うものではありませんね。

 

そんな商社マンのぼくも、山あり谷あり、谷底あり、どん底ありのキャリアだったわけですが、そんな中で最も心に響いた名言を今回は実体験を踏まえて紹介させて頂きます。

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名言の背景となる事態①

2017年頃の事。当時ぼくは1,000億円規模の所属本部の命運をかけた買収案件を担当しており、その中で予算や業績管理の担当(要は数字面の管理)を任されていました。

 

1,000億円の投資って、必要資金を1%で借りてきたとしても、年間10億円の金利が掛かります。1日あたりでも約3百万円の金利コストが掛かります。ものすごい金額です。

 

2021年の今はある商品のトレード担当ですが、苦労して苦労して1件取引したら5百万円くらい利益を稼げますが、それが金利だけで2日で吹き飛びます。トレードの虚無感がすごいです。

 

更に1,000億円なら金利率が0.1%上昇すれば1億円コストが増えます。

また為替レートも0.1円動くだけで、やっぱり1億円ほどズレるわけです。

 

案件の業績を見ていて、そういった数字の変動があるだけでぼくの神経はカンナで削られるように日々すり減り、当時は夜も全く眠れないという事は一切なくぐっすり眠っていました。疲労困憊だったので。

 

悩み事があっても夜眠れないという事はぼくの人生では一度もなく、このあたりは自分の図太さと親に感謝です。

 

ちなみに2019年に武田薬品がアイルランド製薬大手のシャイアーを買収した金額は6.2兆円でした。同様に計算すると、金利は1%でも年間で620億円掛かり、1日あたりでも2億円近く掛かります。1日で2億円。。。

 

また金利率が0.1%や為替レートが0.1円ズレるだけで、62億円も動きます。多分、武田薬品のこの案件の担当者は当時のぼく以上に夜グッスリ泥のように寝ていたと思われます。

 

話を戻して、ぼくの担当していた案件は、やっかいな事に資金調達が円、ドル、ユーロなど多通貨にわたったおり、そうなると為替レートも金利率も当然それぞれで違います。

 

更に更にややこしいことに、投資をするにあたり色々な国に会社を新設して、その会社経由で投資をしたりと、非常に複雑な投資スキームを組んでいました。

 

そういった背景もあり、予算作成は混迷を極めていました。

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名言の背景となる事態②

で、結果、予算作成において20億円ミスってしまいました。

 

これは為替がズレたからとか、自分ではコントロールできない要素が原因ではなく、ただただぼくが、経費を見込み忘れていたというもので、単純なミスです。

 

為替や投資のスキームの複雑さに気を付けるがあまり、20億円もの単純なコストを漏らしてしまったというものです。

 

これ致命的です。オワタ状態です。会社の予算管理部隊に正式な予算として提出してしまっていたので、もう修正は出来ない状況でした。

 

また当時の上司もこんな致命的な20億円の漏れがある事に気づいていませんでした。

 

数字の提出後にその事実に自分1人だけが気付いた時、冷や汗と脇汗が止まらず、鼓動が3倍速ほどで打つようになりました。

 

一周回ってオワタ/(^o^)\とかになるかと思いきやそんな楽観的な自分には一切ならず、そこにはただただ目がバキバキでパソコン画面を呆然と見つめる自分(*..*)がいるだけでした。

 

幸い自分一人しか気づいていない。黙っておくか。でも放っておいても実績が出始めたら数字の違いが出るので確実にバレる。今ゲロるか、後からにするか。

 

いや待てよ。実績が出てバレる前に会社辞めるか、もしくは妻をみごもらせて自分も育休に入るか、いや!妊娠→出産は1年近く後になるからそれだと間に合わないので、出産間近な人と結婚して最速でなんとか育休に入らないと、、、

 

要は冷静な判断ができない状態に陥っていました。

 

そんな20億円の爆弾を抱えながら毎日出社しながらの日々は億劫で、いつバレるか冷や冷やで、予算の話題になっても知らないフリをするのも神経をすり減らしいよいよ毎晩グッスリ眠りました(両親に感謝)。

 

でも、日々目が血走り、一方で顔面は蒼白なぼくの様子を課長が察し、ある日「どうかしたか」と話しかけてきました。

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名言の背景となる事態③

意を決して、ぼくは課長に事態を報告しました。

 

そして何度も何度も「不注意で申し訳ない」「自分のせいで申し訳ない」と謝罪しました。

 

課長はぼくの説明と謝罪を終始黙って聞いた後、事態はわかったと言い、ぼくのコストの認識漏れを軽く注意した後に「さて、上にどう説明するかな」と言いました。

 

意味がわかりませんでした。ぼくがコストを予算に入れ漏れた事が事実であり、それ以上でも以下でもないわけで、きっぱりと説明して謝罪する以外に何があるというのか。。。

 

そこでぼくの課長にそのように伝えました。事態を報告して認識が漏れていたことを謝罪すべきじゃないでしょうか?と。

 

すると課長からぼくの中での名言が出ました。

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「鈴木、謝るって、あきらめる事やからな」

課長は言いました。

 

課長「鈴木、謝るって、あきらめる事やからな。」

 

ぼく「えっ、、(安西先生、、?)でも事実として数字を間違っているわけなので。その点は正直に言って謝らないと」

 

課長「謝ってもそれは思考停止と一緒や。じゃなくてなんとかするんや。辻褄を合わせるんや。こねくりまわして数字の辻褄を合わせるんや。謝るって生産性無いからな」

 

そういって課長は、様々な角度から数字を分解して、前提となる根拠を少しずつ少しずつ調整して20億円の穴埋めに掛かりました。

 

金利を調整してコストを減らし、、、利益はインフレ率を1か月前のを適用したら少し改善するから、これを前提に置き換えて、、、為替レートを調整するとコストも減るが利益も減るし、、、いや新会社の維持コストを、、、あちらが立てばこちらが立たず、、、

 

こうして少しずつ積み上げていきました。頭の片隅では、ずっと中島みゆきのプロジェクトXが流れていました。

 

そして深夜3時頃、少しずつ調整したその積み重ねで、なんとか20億円近い数字の調整に成功しました。

 

ぼくの人為的ミスでしかなかった20億円が、全て為替などのコントロール不可能な要素でズレてしまったという説明に変わりました。

 

この説明なら会社の予算管理部隊も「まぁしょうがない」と納得せざるを得ない内容です。

 

ぼく「で、出来ましたね。。ありがとうございました!」

課長「鈴木、こうやって辻褄を合わせるんや。来月も数字ずれたら、また辻褄合わせに行ったらええ。帰るぞ。」

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まとめ

当時は、謝る事は誠実な事であり、変に言い訳したりするのはカッコ悪いと思っていました。

 

そうじゃないんです。謝る事はあきらめる事であり、サジを投げる事であり、試合終了だったんです。

 

簡単には謝らない。これは謝ったら裁判で負けるから簡単には謝らないというアメリカ的(?)発想ではなく、謝る事は、思考停止という楽な方法を取っているに過ぎないわけで、ではなく、なんとか知恵を絞り、脳みそをフル回転させて、ロジックを再構築して、事態を好転させるよう努力する道を選ぶという事です。

 

当時の深夜3時までの成功体験が、その後のぼくのキャリアにとてつもないインパクトを与えました。

 

「謝らずに辻褄を合わせろ」この言葉を常に意識した事で、その後のキャリアにおいて自分の失敗も見込み違いも恐れる事なく、また間違っていた場合も全力で軌道修正することで、困難な局面も乗り切ってきました。

 

キャリアの一つの大きなターニングポイントにもなった当時の課長の言葉だったと思います。

 

花王は言いました。かわいいは作れる!

商社マン21年目(当時)の課長は言いました。辻褄合わせれば20億円も作れる!

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